ハンガリー ブダペスト

ライトアップされたドナウの夜景

ソ連のかおりと上海の臭い

日本からブダペストへの直行便はないので、ミラノでMALEVハンガリー航空に乗り換えた。たぶん飛行機は大きくないのだろう、ゲートに集まっている人は少ない。季節が季節だけに、ツーリストらしい人はイタリア人のおばさんグループくらいしかいない。ハンガリー人らしき単身の客が多いが、ビジネスマンという風でもない。なにをしにイタリアに来ていたのか気になってしまう。

機材は予想どおり737だったのだけれど、ずいぶんくたびれている。機体はボーイングだが背の低いシートはソ連製の飛行機からはぎ取ってきたようでもある。シートテレビなんてもちろんないし、酸素マスクの使い方もビデオではなくて実演。なんとなく違う世界に連れて行かれるような雰囲気。

狭胴機はすぐに搭乗が終わるのがいい。座席に座るとすぐに滑走路に向けて動き始めたが、そのスピードがむちゃくちゃに速い。クルーは早くブダペストに帰りたいのか?大型機が多いミラノの空港を小さな737が猛スピードで動き回るのは、大型トラックばかりの深夜の高速道路を軽自動車で飛ばすのに似ている。

機内でスナックが出る。ミラノを20:20、ブダペストに22:00というフライトなので、空港の中を転がっている時間を差し引くと実質1時間ちょっと。水平飛行は40~50分くらいしかない。この間にサービスをするのはかなり忙しそうだ。それにもかかわらずサラミがうまいのでワインを3回頼んでしまった私は「人でなし」だと思うけれど、アテンダントは熟練した(「齢を重ねた」と言い換えることもできるが、不適切な表現である恐れがあるのでこうしておく)女性ばかりのようであり、この程度の聞き分けのない客がいても動じる様子はない。

前回ブダペストに来たときは陸路の旅行だったからブダペストのフェリヘジ空港は初めて。小さい!「動く歩道」に乗ることもなく入国。時間も遅いので手っ取り早くATMでハンガリーフォリントをキャッシングするが、このATM機がまた時代がかっている。ボタンの作りは特定郵便局の郵便貯金自動預払機も真っ青。そしてなにより「中に人が入っているのではないか?」と疑ってしまうほどに図体がデカい。「中の人」が不正を働くことを恐れて慎重に紙幣を確認するが特に異常もなく、控えもしっかり出てきた。ご苦労さん。

到着が遅いのはわかっていたので、日本からホテルを予約してある。11月の終わりという極限のオフシーズンだけに、料金は驚くべき安さだった。たぶん直接ホテルに予約を入れるよりも安かっただろう。考えてみると今まで日本からホテルを予約したことは一度もなかったが、宿を決めてあるとずいぶん心穏やかに旅行ができるものだと思う。

空港バスはすでに終わっているし、タクシーも評判がよろしくないと聞いたので「エアポートミニバス」というのを使うことにした。受付のカウンターではツーリスト向けに市内交通乗り放題と観光スポットの無料入場を組み合わせた「ブダペストカード」というチケットを売っている。72時間で4000フォリントもしてお買い得ではなさそうだが、これを買うとエアポートミニバスが割引になるという。5秒間悩んだ末買うことにした。エアポートミニバスは行き先の近い客が座席分集まったら出発、ホテルまで送り届けてくれるお気楽なサービスである。運が良かったのか、ほとんど待たずにすんだ。ちょっと暗そうな運転手がまた、東欧らしいいい味を醸し出している。

空港から市内に向かう途中は7年前とあまり変わらない雰囲気だった。街の照明が暗いのは東西問わずヨーロッパ共通として、灯りのついていない建物が多い。そんな中から唐突に煌々と灯りのついたショッピングモールが現れたりする。以前に来たとき、ブダペストの臭いは「控えめにした上海の臭い」だった。下水の構造とか、洗剤の品質が共産圏はどこも似ていたのかもしれない。今回は真冬で臭いが抑えられているのだろうか、上海の臭いはしない。

途中回り道をして客ひとりを降ろした後、ドナウ川を渡って予約してあるホテルに着く。ミラノから飛行機で一緒だったおばさんたちも同じホテルだった。料金も安かったうえ、王宮の丘のすぐ下にあって便利そうだからここにしたのだけれど、みんな考えることは変わらないみたいだ。ソ連のかおりや上海の臭いはしないけれど、部屋にも文句はない。

今回の旅行は不覚にも寝間着を荷物に入れ忘れ、成田空港で浴衣を買ってきた。この浴衣、漢字の「一番」「福」「寿」が柄になった「典型的な外人向け土産物仕様」。袖を通してみてはじめて気が付いたのだけれど、丈がたっぷりしている。日本の温泉旅館やホテルに備え付けの浴衣はいつも「つんつるてん」で寒い思いをしているので、思いのほか気に入った。これからも持ち歩くことにしよう。今日はまだ糊がきつくて着心地がよくないが、成田価格3500円にしては非常にいい買い物をしたと思う。

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国立美術館

連れのマトリョーシカ君(仮名)はブダペストがはじめてなので、最初に王宮の丘に登り街の様子を見渡しておくことにする。「高いところに登ってみる」のは旅の基本である。幸い、ホテルのすぐ近くに王宮の丘に登るケーブルカーがある。

観光客も少なくて、街を見下ろすのは気分がいいけれど、寒い。寒さに耐えかね、国立美術館に入ってみる。美術館、博物館の類に入るというのは私としてはめずらしく殊勝な心がけである。入場料を払うと「元を取ろう」とする習慣があるため、際限なく時間を費やしてしまうことを大英博物館で学習し、以来旅先では「美術館、博物館は最後に訪問するべし」という決まりにしている。美術品や博物館の収蔵品はなんとなれば本で見ることもできるし、海外で展示されることもあるから、時間切れになって見落としたとしても損害は少ない。

大英博物館以来の禁を破ってしまうほどにブダペストは寒かった。それに加えて今回は「ブダペストカード」というツーリスト向けのチケットを仕込んである。72時間で4000フォリントもする決してお買い得ではないこのカードの元を取るために、通用する施設にはできる限り入場する必要がある。

古い時代の作品から順番にコレクションを拝見させていただく。キリスト受難やら、十二使途やら、聖母マリアの絵をドイツの団体客は大真面目な顔をして、ありがたそうに見入っているが、当方はさしたる感慨もない。楔を打ち込まれたキリストを見て「こりゃどうみても生き返りそうにはないな」などと思うのが関の山である。マトリョーシカ君に至っては「だんだん絵がうまくなっていくのがよく分かる」と宣ったほどだ。

芸術というものは難しい。同じ文化的背景のもとに育った人々にしか見えないコードが含まれているんだろうと思う。ちゃきちゃきに無信仰な私でも、日本の寺院や仏像にはなんとはなしに感慨が湧くことがあるけれど、キリスト教絵画を見たところで、貴重であることを知識として知っているものに対する感情しか湧かない。パムッカレの石灰棚に見入る視点となんら変わらない。

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7年間の禁を破ってしまった

美術館はおなかいっぱいになったし冷え切った体も温まった。漁夫の砦のあたりを少し散歩してから、中央市場に行ってみることにした。今日は土曜日。日曜日は市場は休みになる。月曜日にはブダペストを離れるつもりなので、今日のうちに見物しておきたい。

バスでモスクワ・テールに下りて地下鉄に乗り換え、デアーク・フェレンツ・テールでさらにトラムに乗り換える面倒な道のりだけれど、中央市場にはワインをちびちびやれるスタンドがあるらしい。ワインがあるとなれば足取りは軽い。

入り口には寒さ対策でカーテンのようなものがつけられており、風俗営業法の適用を受ける宿泊施設のようである。中は巨大な体育館のような感じだ。1階は食料品の店がならぶ。ハムやソーセージなど加工品をはじめ肉類が多いので、赤い色ばかりに覆い尽くされた一角が目立つ。ぐるっとテラスのように作られている2階にワインのスタンドを発見。

普段あまり楽しそうな表情をしていないハンガリー人だけれど、酔っぱらいは万国共通でやけに機嫌がよさそうだ。まずはエグリビカヴェール(100HUF)からはじめる。ワインをやりながら市場を上から見下ろせるロケーションはすっかり気に入り、2杯、3杯、たくさん...何杯飲んだか忘れてしまう。

飲んだワインの数は忘れてしまったけれど、大変なことを思い出してしまった。私は7年前にヨーロッパを旅行したときから現地時間正午前にはアルコールを摂取しないことにしている。ヨーロッパ、とりわけイギリスやドイツのメシはまずい。そのくせお酒と酒のつまみだけは味もよろしく、充実しまくっている。私はまずいものを口に入れるのが嫌いだ。お食事ものはまずくて最小限しか口に入れたくないけれど、お酒はおいしいやつが目の前にならんでいる。そうなるとお酒を飲むよりほかなくなる。

当然ながらこれをやりすぎるとアルコール依存症、さらにはアルコール中毒になる危険がある。ドイツのミュンヘンでこの危険が非常に近くまで忍び寄っていることに気づき、それ以来現地時間正午前はアルコールを摂取しない決まりにしてきたのである。

しかし、エグリビカヴェールその他ワインいろいろをさんざん飲んで時計を見ると11:50。これはまずいことをしてしまった。激しい自己嫌悪に襲われるが、飲んでしまったワインのアルコール分はすでに血液中に広く散らばってしまっている。こうなってしまった以上仕方ない。本日をもって「午前中禁酒」のルールは取りやめることにした。

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冬の観光客

11月終わりのブダペストはしゃれにならない寒さだ。3分も外に出ていると、一刻も早く建物の中に入りたいと思うようになる。街を歩いている人がやけに少ない理由は、週末だからということだけではないだろう。寒いだけではなくて、15:00を回ると薄暗くなり始める陽の短さ。こんな時期にブダペストへやってくるツーリストはかなり奇特な趣味の持ち主ということになるらしい。

中央市場のスタンドでワインをやっているときに数少ない「ツーリスト」と話をした。おばさまと呼ぶにはちょっと失礼な感じの女性ひとり、第一印象は少々怪しく「もしや東側工作員の残党か」と思わせる雰囲気があった。学生風でも、ビジネス客風でもない女性ひとりの欧米人ツーリストはかなり珍しい。

しばらく話をしてみて判明したひとりでブダペストに来ている理由はなんと、歯科治療だった。ハンガリーの歯科治療は技術がよい割に格安なのだそうだ。彼女の住んでいるスイスからは、ハンガリーの観光がオフシーズンになると、たくさん「歯科治療ツアー」が出ているという。

サラエボ出身の夫が失業中であること、スイスにはなぜか日本人旅行者が多いこと、以前に日本を旅行したときの話など、とりとめのない話ばかりをしたけれど、久しぶりに話し相手を見つけたのがちょうどいい退屈しのぎになっていたようだ。歯科の治療も一日中やっているわけではない。ブダペストの治安は悪いわけではないが、女一人で夜出かけられるところは限られる。

ヨーロッパの街には見るところ、遊ぶところは多いけれど、一人の客が居場所を探そうとなると、考え込んでしまう。生活の基本がカップルで行動することを前提に作られているから、レストランも一人では敷居が高いし、オペラやコンサートにしても、一人の客は場違いで浮いてしまいがちだ。

治療目的のツアーというのは、おもしろい着眼点だし、市場経済への移行がなければ出てこなかった発想だとは思う。けれども、治療以外のところでも居心地の良さを演出できなければ、これ以上広がることもないのではないか。

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温泉とプール

私にはこのサイトにふさわしい「ネタ」を仕入れるという責務がある。その責務を果たすため、さほど長くなかったハンガリー滞在の10時間以上を温泉の中で過ごしてきた。まずはブダペスト編。前回の訪問ではどちらかというと庶民的なセーチェニーを試したが、今回は高級温泉である。

最初に訪ねたのはマルギット島の「Danubius Thermal Hotel Margitsziget」。ブダペストでは一番高級な温泉にランクされている。外来入浴料4000HUFに腰を抜かしそうになったものの、任務を全うするためにはこの程度の出費を惜しんではならない。

受付のお姉さまたちはとても親切そうに案内してくれ、ボラれたわけではないことはすぐにわかる。男女別に分かれたロッカー室の中に更衣室があり、持参したトルコ仕込みのゆったりした温泉用水着に着替える。

更衣室からドアをくぐるとお目当ての温泉。やはりプールがある。これは完全にプールなのであって、風呂ではない。張られているのは温泉から引かれたものではあるが、30度に達しない水であり、「お湯につかる」のではなく泳ぐスペースである。水に手だけ入れてみたが、冷たい!即時退散。

プールのとなりの区画はいくらか風呂に近い。浴槽により水温は36~38度。こちらはまったりとお湯につかることを楽しむスペースである。セーチェニー同様、ぬるいのが不満だが、何時間でも浸かっていられる温度は悪くない。これはこれで「あり」といえる。ハンガリーの場合、日本人が風呂に求めるような熱さは、必ずと言っていいほど併設されているスチームバス、あるいはサウナの方で楽しむということらしい。

慣れてくれば気にならないが、カルキの臭いはかなり強い。ここは全体としてお湯につかるための施設ではなく、あくまでも健康増進、あるいは病気の治療のための施設なのだろう。雰囲気としてはスポーツジムに近い。そしてハンガリーの人たちが「高級」だと思うもののひとつが、こういう形なのかもしれない。

ブダペストの温泉その2は「Danubius Thermal Hotel Gellert」である。前回の訪問で入り損ねたこともあり、ここにはかなり期待していた。ネットで検索してみると、オフシーズンのせいか宿泊料金はかなりお買い得になっている。「よし、泊まろう」ということでWebから予約。

温泉だけでなく、建物全体がすごい。幽霊屋敷のようにも見えないことはないが、重厚な造り。ドナウ川を見渡すバルコニーからトラムを待つ人を眺めていると、思わず「予は苦しゅうない」と呟いてしまうような殿様気分に浸れる。

さてGellertの温泉だが、プールのセクションと温泉のセクションがはっきり分けられている。温泉のセクションはThermal Hotel Margitszigetに比べると格段に「風呂らしい風呂」の造り。カルキ臭も弱めである。水着を持参してもよいが、温泉用の「ふんどしもどき」を借りることもでき、こいつを着用するとだいぶん雰囲気が出る。

プールのセクションはやはりプールなのであって、お湯に浸かるという認識はされていないようである。プールの水温は26度(推測)。手と足だけ浸かって、逃げ出す。それでも内部の装飾は凝っていて、この空間に長居をしたいという気分にはさせられる。幸いプールのセクションの片隅には38度前後のお湯が用意されており、ここで2時間以上過ごしてしまった。

それにしてもヨーロッパ人は、冷たい水を全く苦にしないようである。ネパールで一緒に旅行していたドイツ人が、起き抜けに冷たい(ぬるいどころではなく本当に冷たい)水のシャワーを浴びるのに仰天したことがある。

Gellertのプールで泳いでいる方の中にはかなりご年輩の方も多いようだけれど、どういう体の構造をしているのか、まったく不思議でたまらない。同じことを日本人がやったら、3日に1回はプールに水死体が浮くこと間違いなしである。

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ゆるめのズボン

このサイトの読者に失礼のないよう、食べ物についても上質な「ネタ」を仕込んでくる必要があった。しかしながら、こちらの方はなかなかうまくいかなかった。なにぶん胃袋の容量は限られている。10ギガのハードディスクには10ギガ以上のデータは入らない。クラスタギャップを考慮すると10ギガを必ず下回ることになる。

ホテルの朝食は宿泊料に含まれていた。ブダペストでは旅行代理店を通して予約していたCarlton、Webで予約を入れたGellertの2つのホテルに泊まったが、いずれも朝食はビュフェ・スタイルである。ソーセージ、チーズはどちらもうまい。ビュフェにならぶおかずの種類は料金の高いGellertの方が豊富だった。

ホテルの格はいうまでもなくGellertが上だし、「オフシーズンお買得価格」とはいえ、今回Gellertに支払った料金はCarltonの2倍以上である。しかし不思議なことに、朝食の満足度となるとCarltonに軍配をあげたい。お皿の数は少なくても、素材選びがよく、温かい料理が冷めない工夫が丁寧なのである。

これはどういうことか?冒頭でも示したように、Carltonはホテルパック、あるいは宿は付きのパッケージツアーで滞在している客が多いようなのである。このような宿泊において、ホテルはおおむね朝食付きのプランで利用される。

ホテルに対する評価では、客室の設備、アメニティなどが重要な指標となるが、これらはある程度の水準を達成すると飽和してしまい、それ以上の改善の余地は少なくなる。加えてハンガリーにおける観光産業の主要な顧客は、バカンスの予算にうるさい(そして普段はろくすっぽ朝メシなんて食わない)ヨーロッパのツーリストである。

こうした背景のもと、朝食ビュフェは宿泊プランの販売に関してホテル側ができる差別化の重要な項目になっているようだ。差別化に対する努力を行わなくとも集客のできるGellertにおいては、朝食ビュフェに注力する必要は少ない。

一方、Gellertのような伝統も温泉設備もなく、パック旅行を主な顧客とするCarltonでは、朝食ビュフェの出来不出来が宿泊の満足度を大きく左右する。日中は見かけることのない経営者と思しきおばさんが朝食ビュフェのときだけ泊まり客の前に出てきていたのはなかなか印象的であった。

さて、関心事の市中のレストランだが、最初(到着翌日の昼)に試したのはMuzeum。中央市場から歩いても10分くらいだ。もちろん改装を重ねているが、100年以上の歴史を持つレストランらしい。ブダペストのレストランの中でもかなり高級な部類に入ると思われる。ワインはバラトンの白。うまい!以後白ワインはバラトンを指定銘柄とする。

スープはグヤーシュとヨウカイハブレベシュの2種。これらはいたって普通。ひたすらおいしい。たまげたのはメインに注文したPikefish(カワカマス)のグリルと鶏肉のハーブ風味である。なによりまず皿がでかく、その幅は目測600mm。皿が大きいだけでなく、盛りつけられた料理の量も多い。本来ならば一品でも多く味わい、このサイトのコンテンツ作成に役立てたいところだったが、これではちと難しい。

仕方なくメインはこれだけにして注文したデザートのアイスクリームも、想像をはるかに超える分量であった(下写真)。どこから入手したかは不明だが、この寒い内陸国ではイチゴもオレンジも貴重であろう。マトリョーシカ君と「要らぬ争い」を起こすことを恐れ2皿注文したものの、これはふたりひと皿で十分である。3種類のアイスクリームはもちろんおいしい。

Muzeumのアイスクリーム

昼メシは多すぎた。温泉でかなり腹ごなしをしたものの、しばらくはしっかり食事をとりたいという気分にはなれない。そういうわけで夜はカフェで済ませることにした。ブダペストにはカフェがたくさんあるけれど、一番老舗でありそうなCentral Kavehazを選択。

Muzeum同様かなり古い。どうやって掃除をするのか不思議なくらい、やたらと天井の高いつくりがいい。この店は喫煙席と禁煙席が厳格に分けられており、「く」の字型の店内の下の方が禁煙、上の方が喫煙である。われわれはたばこを吸う。お酒が入るとさらに吸う。ついでにお酒は滅法強い。当然喫煙席にする。店の造りが「く」の字型になっているので、窓際の席に座れる確率はかなり高い。その窓際の席から通りの様子を眺めつつ、お酒をいただくのはとても幸せ。

おつまみになりそうなソーセージ盛り合わせ、店ごとの味をいろいろ試したいグヤーシュなど、いろいろ注文してみたが、勘定を見ると圧倒的にワインの占める率が高くなっていた。こうなると地下鉄やバスを乗り継いでホテルに帰ることは不可能である。従ってタクシーを呼んでもらう。感じがよかったわりにかなりお安いタクシー会社だった。

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ハンガリー・スロヴァキア・チェコ

覚え書き

旅の指さし会話帳ハンガリー

ガイドブック

ガイドブックのガイドブック
ハンガリーと中欧
バルカン半島
Lonely Planet Hungary, Lonely Planet Publications, Australia.

英語ガイドブックの定番。よく練られた地図や充実したインデックス、裏表紙のスケールと度量衡換算表など、ガイドブックとしてのスタイルは大変優れている。掲載されている情報量は膨大。特にブダペスト以外の地方に関しては、これ以上の情報量を収録したガイドブックはない。

Budapest (Eyewitness Travel Guides), DK Publishing, London.

やはり定番のひとつ。イラストや写真を使って世界の都市を解説するシリーズのブダペスト編。ブダペストをじっくり歩きたい場合には必携。ランドマークをひと目で把握できるので、「方向音痴」(?)の人には特に好評である。

ハンガリー、ダイヤモンド・ビッグ社

ブダペストに関しては情報量も多く、よくまとまっている。Lonely Planetに対してややリード。写真の多い紙面のおかげで、見どころを逃すこともないだろう。一方、エゲル、ミシュコルツについては情報が少なかった。ブダペスト以外の地域についてはLonely Planet依然強し。

両替・為替レート

2001年11月時点のレートは

インフレ傾向にある国なので、このサイトに掲載されているHUF表示の価格はこの為替レートをもとに日本円に計算し直すと実際に近くなる。

イタリアの空港

今回の旅行では、ブダペストin、プラハoutのアリタリア航空のチケットを利用した。行きがミラノ乗り換え、帰りがローマ乗り換えであった。成田-イタリアの間は往復ともコードシェアのJAL便、ミラノ-ブダペストはマレーブ・ハンガリー航空、プラハ-ローマのみがアリタリア航空の便。

当然ながらいずれも禁煙。それはよいとして、イタリアでは空港も全面禁煙になっていて、喫煙スペースなどは用意されていない。しかし、このような現実からかけ離れたルールは必ず破られるのが常である。「隅の方でこっそり吸え」というのが空港関係者の見解のようだ。ミラノの空港では、いちばん端っこのレストランが事実上の喫煙スペースになっている。禁煙の空港でも従業員がヘーキな顔してたばこをふかしていたりする。

Airport Minibus

空港から市内への乗り合いタクシー。ホテルなどに直接乗り付けられる。近くの方向に向かう客が集まり次第出発するので、待ち時間は運次第。空港の受付カウンターで申し込みした後、客が集まると名前を呼び出される。耳に自信のない場合は受付カウンターのお姉さんに3分に1回は視線をおくり、存在をアピールしておく必要がある。

1800HUF、ブダペストカードを買うと1500HUFに割引。

ブダペストカード

72時間市内交通乗り放題、入場料無料、割引になる施設多数。市内交通を最初に利用するときに自分で裏側に日付を入れ、表にはサインをする。

市内交通乗り放題以外の特典は日付の記入とは関係なく適用される模様。例えば

  1. 空港で購入
  2. Airport Minibusの割引チケット購入
  3. 博物館など入場
  4. 市内バス利用

のような場合、「4」の時点で日付を記入すればよいようだ。

正直言って元を取るのはかなり大変。大きめの地下鉄の駅などで売られている市内交通だけ3日間乗り放題のチケットの方がお買い得。

ブダペストカード-表
ブダペストカード-裏

Carlton Hotel

日本から旅行代理店経由で予約。オフシーズンなのでツイン6200円という破格値であった。ブダ側、王宮の丘のすぐ下にあり、ケーブルカーの駅も近いが、眺めがいいというわけではない。

それほど大きくないホテルなので、管理は行き届いている印象。バスタブはなくシャワーだけの部屋だったが、設備は十分。ビュフェスタイルの朝食もまずまずだった。

Siklo

Sikloのチケット。高価な栞として愛用。

ヴェトナムの自転車タクシーではない。くさり橋のブダ側から、王宮の丘に登るケーブルカー。チケット(右画像)の下から上を移動するだけの斜めに動くエレベータのような乗り物。装飾はアンティークっぽくて魅力的だが、わずか1分で終点に着いてしまうにもかかわらず、お値段はなんと、400HUFもする。ブダペストカードも通用しない。

国立美術館

ブダペストカードで入場無料になる。トイレのドアは重々しい作りだが、中はいたって普通。

URI:http://origo.hnm.hu/

中央市場

自由橋のペスト側。2階に軽食やワインのスタンドがある。市場の様子を眺めながら1杯やれる雰囲気が良し。日曜日は休み、土曜日の終了時間は13:00、14:00など諸説ある。エグリビカヴェール100HUF。

中央市場

Muzeum

住所はMuzeum Korut 12。このほかビールとエスプレッソを飲んで2人分の勘定は13000HUF。かな~り高級である。

この店は日本のファミリーレストランのように伝票をレジに持っていって勘定をする。ルールがよくわからなかったが、チップもそのときにレジで払うようだ。

持ち帰ったレシートには「Muzeum Kavehaz」と書かれている。ここもカーヴェハーズに分類されるのだろうか。

Central Kavehaz

住所はKarolyi Mihaly ut. 9。地下鉄の駅で近いのはFerencieK ter。勘定約7000HUFの約半分はワインとビール。夜の雰囲気はいい。1回行ってみる価値あり。

ブダペストの治安

ニセ警官
ツーリストの所持金やパスポートを検査しようとするらしい。かなり横行しているらしいが、なぜか一度もお目にかからなかった。ちょっと楽しみにしていたのに、残念。7年前にやって来たときもとうとうお会いできずじまいであった。
闇両替
たまに出没するらしい。闇のメリットはまったくない。
検札
地下鉄、バス、トラムなどで切符を持っていない客を摘発する。地下鉄ではかなり頻繁に取り締まりをしている。
貴重品
現金と予備のクレジットカード、航空券はホテルのセイフティ・ボックスに、パスポートはシャツの胸ポケットに、クレジットカードと当座のフォリントを入れた財布はコートの内ポケットに入れていた。外務省の海外危険情報などに書かれているよりも、だいぶん安全な印象。

Danubius Thermal Hotel Margitsziget

ブダペストのお風呂の中では一番高級。入浴料はなんと4000HUF(泊まり客はタダ)。ホテルの前を通るバス(26番)は15~20分に1本程度あるが、ルートがちょっとわかりにくい。

ニュガティ駅-マルギット橋-マルギット島一周-マルギット橋-ブダ側を北上-アールパード橋-ニュガティ駅と回っているようだが、マルギット橋の上で左折できないことがルートをわかりにくくしている。帰りのバスがブダ側を猛スピードで北上しはじめたときにはあせった。

Danubius Thermal Hotel Gellert

ブダペストの老舗温泉ホテル。

Web予約はオフシーズンのせいか思いのほか手頃な値段だった。

「Twin」で予約した部屋は132EU、バスタブ付き、朝食ビュフェ込み。ドナウ川を臨む部屋になったが、このランクだと部屋の向きは保証の限りではない。

泊まり客は温泉の入浴料、プールの使用料金無料。部屋に備え付けのバスローブはとても着心地がいい。このバスローブ、購入希望の場合20000HUF。かなり迷ったが買わずじまい。未だに後悔している。

ゲッレールトホテルのプール

ゲッレールトホテルのプール。手前には38度のお湯もあるが、このプールの水は冷たい。

タクシー

客待ちしているものを拾うよりも無線で呼び出してもらうことが多いらしく、レストランなどの人も手慣れている。呼び出してもらったタクシーで危険を感じたりトラブルに遭うことはなかった。

料金は東京に比べると約半値(東京のタクシーは日本の中で安い方である)。ただし、高級ホテルや高級レストランで呼び出してもらうと使っている車のよい、料金が高めの会社になるようだ。